鑑定基準について・・日刀保が鑑定基準を公開するようになり、不要なコンテンツになりましたが掲載しております。
平成16年度
保存 受付5607点、合格3571点 合格率約63%
特別保存 受付1797点 合格941点 合格率約52%
重要 受付1073点 合格185点 合格率約17%
特重 受付328点 合格76点 合格率約23%
近年、合格の基準が引き上げられたようで合格率は低くなってきております。
審査に出す前に(傾向と対策)
- まず登録証が付いていますか?付いていない場合受付不可です。
- 白鞘なしでも拵があれば審査に出せます。
- 保存は古研ぎ程度であれば合格できます。特保は上研ぎ以上、重要以上を狙う場合は必ず最上研磨を済ませておきましょう。
- 重要、特重は審査回数が少なく、出来れば早めの準備をお奨め致します。
合格出来ない例
- 刃切がある。
- 錆身。刃文、帽子が見えないと鑑定が出来ませんので審査対象外になります。(やや古研ぎは可。)
- 偽銘。
- 目立つ疲れや修正が多い物。
- 再刃も例外を除き不可能です。
保存・・・登竜門です。
上に挙げた5つの条件さえクリアしていればまず合格できると考えて良いでしょう。
- 在銘の場合は真正であるということです。
- 無銘は極めです。
- 現代刀(存命の刀匠の作品に鑑定書は発行されません)以外、磨上、区送り、造の変化があっても合格出来ます。
- 多少の疲れや傷は関係なく合格出来ます。
- 刀工の位列もとわれません。
特別保存・・・美術的価値が高いとの評価
- 保存審査で挙げた5つの条件とほぼ同じですが無傷である方が当然有利です。
- 新刀では健全さも対象になってきます。
- 刃文の出来、姿なども審査基準です。
特別保存は合格ラインが高くなりました。新しく指定された作品は優れていると考えて良いとも言えます。鎌倉、南北朝時代の無銘の作品は研ぎが古いと合格しないことがあります。
重要・・旧重要美術品に匹敵する作品
- 日刀保の特別保存に指定済みでしょうか。特保指定でないと重要審査に申請出来ません。
- 最上研磨済みにしてありますか?最高の状態で申請して下さい。
古刀の合格基準
- 位列は余り重視されません。中上作クラスでも傑作刀なら指定されます。
- 造込みが変っていても問題ありません。長巻直しの刀など多数指定されています。
- 大磨上無銘(室町時代無銘は除く)でも全く問題ありません。長大な太刀を打刀に直したことは歴史的に仕方ないことです。
- 目釘穴が2,3個あってもあまり関係ありません。
- 合格できる基準はかなり甘めと思われます。ただ指定されることは容易ではありません。
新刀、新々刀の場合
- 新刀、新々刀の合格基準は位列重視のようです。上作工(上々作以上)でないと難しいです。
- 新刀は原則造込みを直す必要性がないとされていますので区送り、茎の尻詰め、磨上は一切認められません。うぶ姿必須です。目釘穴もうぶ穴のみが好ましいです。
- 在銘品のみ。出来れば年記、金象嵌銘などあると有利だと思います。
- 刀身、茎とも健全でなくてはいけません。どんなに刀身が良くても茎が駄目だと合格出来ません。
- 新刀の場合は条件が厳しいです。理想的な条件を備えていなければいけません。
- 新刀指定枠は非常に少なく、競争率が高くなっています。
特別重要・・重要美術品上位、あるいは重要文化財クラス
重要指定品のみ審査に出せます。
あえて条件を挙げる必要がないと思います。重要指定の中で優れた物に与えられるものです。古名刀、最上作クラスでないと難しいでしょう。新刀では助広、真改、虎鉄などトップの巨匠クラスでないと指定されないと思います。
以上ですが鑑定基準はあくまで当方の見方であり審査員と見解の相違があると思います。あくまでも参考として下さい。基準をクリアしていたはずなのに不合格だった等のクレームはご遠慮下さい。お願いします。
鑑定書の見方・・・例を交えて分かりやすく解説します。
例として銘に鍛冶と切る一族がいて10代続いたとします。その一族がどのような指定を受けるか考察します。活躍年代、俗名は全員分かっているとし、鑑定上「鍛冶派」と分類されるとします。
初代、一郎 二代、二郎・・・鎌倉時代
三代、三郎・・・南北朝
四代、四郎 五代、五郎・・・室町時代初期
六代、六郎 七代、七郎 八代、八郎・・・室町中期
九代、九郎・・・室町末期
十代、十郎・・・江戸
銘に俗名や年紀があれば誰であるか容易ですが実際は二字銘や無銘が多くあります。
鍛冶・・・無銘、あるいは鍛冶派であるが誰か分からないと言う場合。
鍛冶(○○時代)・・・時代は絞れるが同時代の同銘と区別出来ないという場合。上で言えば「鍛冶」(室町中期)となれば六代〜八代の誰かと言う事になります。
鍛冶(一郎)・・・個人の特徴が出ており、体配、地鉄なども鎌倉時代と断定できる作品。
結論として但し書きの意味を良く考えて正しく判断することが大切かと思います。